対談:「民主主義 vs. 権威主義」のゆくえ(経済セミナー2022年10+11月号)

特集から(経済セミナー)| 2022.09.27
経済セミナー』の特集に収録されている対談・鼎談の一部をご紹介します.

(奇数月下旬更新予定)

近年、ポピュリズムの台頭などを背景に民主主義の危機が叫ばれる一方、安全保障上の懸念もあいまってロシアや中国のような権威主義体制の国々の動静にも大きな注目が集まっている。今回は、ゲーム理論等を用いて政治現象を分析してきた浅古氏と、政治体制などを研究する比較政治学が専門の東島氏に、民主主義と権威主義に関する経済学・政治学の豊富な知見を紹介いただきつつ、今後のゆくえを探っていきたい。

1 はじめに

—本日は、近年の経済学・政治学がどんな政治現象に着目し、どのように分析しているのか、それぞれの視点から議論をいただきたいと思います。まずはお二人の専門とバックグラウンドから、よろしくお願いします。

浅古 早稲田大学の浅古です。バックグラウンドは経済学で、慶應義塾大学経済学部、一橋大学の経済学修士課程を経て、ウィスコンシン大学マディソン校で経済学の Ph.D.を取得し、2 年半ほど日本銀行金融研究所で働いてから早稲田に着任しました。専門は「公共選択論」、政治学では「数理政治学」と呼ばれる分野で、より広くは応用ゲーム理論です。具体的には、選挙競争における公約の役割や、議会内交渉について数理モデルを用いて研究しています。政治学では、数理モデルは「フォーマルモデル」とも呼ばれています。より最近は、政治的な分極化のモデルをもとにした実験室実験にも取り組んでいます。過去にもバブルをテーマに実験室実験を行ったことがあるのですが1)、現在は政治学者と組んで政治をテーマに実験室実験を行っています。政治学では実験室実験はそれほど盛んではないこともあり、その点でもおもしろいです。

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脚注   [ + ]

1. Asako, Y., Funaki, Y., Ueda, K. and Uto, N.(2020) “(A) symmetric Information Bubbles: Experimental Evidence,” Journal of Economic Dynamics and Control, 110, 103744.