(第7回)気分が落ち込んで「死にたくなる」とわが子に言われたら? 気分の浮き沈みがあるわが子に有効な薬はあるのでしょうか?

子どもの心のお薬Q&A(岡田俊)| 2022.04.04
子どもが病院や診療所で心の薬による治療を薦められることは決して稀ではありません。子どもだって心が病むときも、その回復に支えが必要なこともあるのです。安易な薬物療法は望ましくありませんが、一律に避けてしまうというのも子どものためになりません。子どもの精神科薬物療法について、できるだけわかりやすくQ&Aでお伝えします。

(毎月上旬更新予定)

Q 「うちの子は、気分が落ち込んで無性にリストカットをしたくなるといいます。迷いに迷って病院に連れて行ったのですが、お薬を飲むと余計に死にたくなることもあるといわれました。どういうことでしょうか?」

気分の落ち込みを感じている子どもは多くいます。しかし、大人のうつ病とはいくぶん異なる特徴があることが知られています。このことがご質問と関係してきますので、そのことからご説明しましょう。

うつ病というと、気分のエネルギーが枯渇したイメージがあるでしょう。たしかに、これも抑うつ状態の一つの側面です。しかし、うつ(鬱)という漢字は、うつうつ(鬱々)とする、うっぷん(鬱憤)を晴らす、うっそう(鬱蒼)と茂るといったときにも使われます。この鬱という字は木々が繁茂しているさまであり、エネルギーが充満して出所がない様子なのです。こころの状態でいえば、イライラとしている様子であり、時に不機嫌であったり、怒りがこみあげたり、ということもあるのです。リストカットをするときも、悲しみや悲嘆だけでなく、絶望と怒りが混在したような複雑な心理状態にあることが少なくありません。

子どものうつ病に対しては、三環系や四環系といった古いタイプの抗うつ薬は有効でないことが明らかになっています。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という新しいタイプのなかには有効性が示された薬剤があります(ただし、米国で8~18歳に適応があるフルオキセチンは日本では使用できず、12~17歳に適応があるエスシタロプラムは使用可能ですが、本邦で小児への有効性と安全性が確認できているわけではありません)。しかし、その他の新しい抗うつ薬については、有効性がわずかであったり、十分に確認されていない薬剤もあります。

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岡田 俊(おかだ・たかし)
精神科・児童精神科医師。1997年京都大学医学部卒業。同附属病院精神科神経科、デイケア診療部などの勤務を経て、2011年より名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科、2020年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所に勤務。