(第3回)オーロラ発生の仕組み

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2022.07.13
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

地球上層大気は,オーロラ電子を受け止めて映像を映し出す立体スクリーンの役割を担っている.では,このオーロラ電子は,どこからどのようにしてやってくるのか? ここではそうした疑問に答えつつ,先ごろ我が国の科学衛星 “あらせ” によって発見されたオーロラ電子の加速域についてのホットな研究成果についてもふれてみる.

太陽地球間空間の環境

太陽は内部での活発な水素の核融合反応により生じた核エネルギーを惑星間空間へ放出するとともに,その表面からは太陽内部の $1000$ 万度以上という超高温状態によって水素原子を分離してできた陽子と電子の混合ガスを噴出している.これが太陽プラズマで,その流れを太陽風という.その速さは $300\sim 700\,\t{km}/\t{s}$ 程度で,地球へは $2\sim 4$ 日ほどで到達する.

さらに,太陽は (地球の公転を考慮すれば) 周期 $27$ 日で自転しているため,太陽面から絶えず噴き出す太陽風により太陽磁場が惑星間空間へ引き伸ばされて,惑星間空間に螺旋状に伸びた状態となる.これが惑星間空間磁場である (図1).

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半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.現在,成蹊大学非常勤講師.

著書:『ミッション解析と軌道設計の基礎』(現代数学社,2014 年),『惑星探査機の軌道計算入門 ―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2017 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年) ,『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) など.