(第2回)「集団に従い過ぎる」または「完全に反発する」

日本のリーダーはなぜ決められないのか――経営に活かす精神分析(堀有伸)| 2022.02.22
経営における意思決定に、深層心理はどのような影響を与えているでしょうか。この連載では、日本の文化や慣習が組織のリーダーの「決断」にどのような影響を与えているかを、MBAで学んだ精神科医が、精神分析理論等を参照しながら明らかにしていきます。

(毎月下旬更新予定)

日本人は本当に集団主義なのか?

現在は、スマートフォンが世界の市場を席巻しているが、日本で開発された携帯電話は「ガラケー(ガラパゴス携帯)」と呼ばれ、世界の携帯電話市場で存在感を示していない。このように日本の企業は、国内の市場に特化し過ぎてしまうために、テクノロジーの進展や国際環境・社会情勢の変化に対応できていないと批判されている。

そして、日本の社会や文化の問題点というと、「集団主義」が指摘されることが多い。組織や集団が個人を圧迫し、その場が作る空気に、一人ひとりがまったく逆らえなくなっている。そのために、集団の合意として決定された事柄は、その内容が不合理であっても修正されずに実行されてしまう。たとえば、国力に大きな差があったにもかかわらず、アメリカに戦争を挑んだ第二次世界大戦について、そのように振り返られることがある。

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堀 有伸(ほり・ありのぶ)

精神科医。1997年に東京大学医学部卒業後、都内および近郊の病院に勤務しながら現象学的な精神病理学や精神分析学について学んだ。2011年の東日本大震災と原発事故を機に福島県南相馬市に移住し、震災で一時閉鎖された精神科病院の再開に協力した。2016年、同市内に「ほりメンタルクリニック」を開業。開業医となった後にグロービス経営大学院で学ぶ。著書に『日本的ナルシシズムの罪』(新潮新書)、『荒野の精神医学』(遠見書房)。