(第2回)太陽風

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2022.06.13
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

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地球の極域に見られるオーロラの源は,太陽面から噴き出す太陽プラズマ,つまり電子と陽イオンの混合粒子流であって,“太陽風” と呼ばれるものである.この太陽風は,太陽磁場を惑星間空間へ運び出して惑星間空間磁場を形成するが,その行き着く先はいずこにあるのか,探ってみることにしよう.

太陽風の発見

太陽面でフレアが発生すると,その数日後に地球で磁気嵐1)が発生することから,20 世紀中葉までは,フレア発生時にのみ太陽から高速の粒子が吹き出して来ると考えられていた.しかし,地球科学者ビアマンは彗星の尾を詳細に調べた結果,太陽からつねに何らかの荷電粒子が吹き出しているのではないかと推測していた.

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脚注   [ + ]

1. 磁気嵐とは,地磁気の定常的な日変化が著しく乱れる現象を指す.

半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.現在,成蹊大学非常勤講師.

著書:『ミッション解析と軌道設計の基礎』(現代数学社,2014 年),『惑星探査機の軌道計算入門 ―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2017 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年) ,『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) など.