座談会:論文の書き方はどう教えている?(経済セミナー2021年8・9号)

特集から(経済セミナー)| 2021.07.22
経済セミナー』の特集に収録されている対談・鼎談の一部をご紹介します.

(奇数月下旬更新予定)

はじめて論文を書くとき、どんな点に気をつければよいだろうか? どのようにテーマをみつけ、どんな手順で自分のアイデアを論文にまとめていけばよいだろうか? そもそも論文とは何だろうか?

今回は座談会形式で、「リサーチクエスチョンのみつけ方」「先行研究の探し方、読み方」「アカデミック・ライティングの心構え」、そして「論文の内容を伝えるコツ」の 4 つのテーマに分けて、それぞれの要点と、特に重視すべきポイントを解説する。

  • 中室牧子さん(なかむろ・まきこ)/慶應義塾大学総合政策学部教授
  • 平賀一希さん(ひらが・かずき)/名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授
  • 室岡健志さん(むろおか・たけし)/大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授
  • 森知晴さん(もり・ともはる)/立命館大学総合心理学部准教授

リサーチクエスチョンのみつけ方

はじめて論文を書くとき、まず直面するのが、「どうやってテーマをみつければよいのか?」という問題だ。ここでは、「論文とは何か?」「何のために書くか?」を改めて考えてから、どのように論文の「問い」を立てるかを学んでいこう。

1 はじめに

—本日は、論文を書くための「はじめの一歩」で特に重要な点について、具体的なご指導の経験などもふまえてディスカッションいただきます。最初のテーマは「論文の問いをどうやって立てるか」ですが、まずは皆さまの自己紹介からお願いします。

平賀 名古屋市立大学大学院経済学研究科の平賀一希です。学部では公共経済学を教えています。昨年度まで東海大学政治経済学部で教えており、学部 2〜4 年生が所属するゼミを担当していました。ゼミのテーマは「日本の経済政策の実証分析」で、2、3 年生はグループ論文を、4 年生は個人で卒業論文 (卒論) を書くという形で指導していました。特に 2、3 年生は中室先生が中心になってつくられた ISFJ (日本政策学生会議) 1) や、公共選択学会が開催する「学生の集い」など 2)、学外の論文コンテストに積極的に参加していました。

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脚注   [ + ]

1. ISFJ (日本政策学生会議) とは、1994 年に設立された学生が政策を提言することを目的とした、複数大学の学生によって運営される組織 (http://www.isfj.net/) である。毎年、論文・政策提言発表コンテストが行われている。『経済セミナー』 2020 年 8・9 月号の特集「経済論文の書き方 [実証編] 」でも詳しく取り上げているので参照されたい (『経済セミナーe-book no.23』にも収録)。
2. 「学生の集い」とは、公共選択学会が毎年開催する論文コンクールで、同一のテーマのもとで寄せられた論文と、そのプレゼンテーションに基づいて審査される (http://www.publicchoice.jp/gakusei/index.html)。