(第4回)もともとの症状? それともくすりの副作用?

こころのくすり、くすりのこころ(渡邉博幸)| 2021.01.08
「いつまでくすりを飲まないといけないの?」「副作用が心配です」「今のくすりが合わない気がする……」。精神科のくすりを服用する際、当事者や家族は疑問や不安を抱くことがあるでしょう。くすり以外の方法を用いることも大切です。医療者が一方的に治療を提供するのではなく、当事者・家族・支援者が見通しを共有し、よりよい治療につながる工夫を考えます。

(毎月上旬更新予定)

実はポピュラーなこころのくすり

みなさんは、どんな気持ちを抱きながらくすりを飲むでしょうか?

たとえば、頭痛・生理痛のときや風邪症状があるとき、胃もたれしたとき、お腹の調子が悪いときなど、日常生活でよく遭遇する自覚症状のあるときには、あまり戸惑うことなく、医療機関を受診したり、薬局で購入したりして、くすりを飲まれるのではないでしょうか。

一方、こころに作用するくすりの場合はどうでしょう。多くの人にとって、不安や不眠、気分の落ち込みや意欲低下、あるいは幻聴体験というような精神的な不調は、「そのような状態に自分が陥ってしまったこと」自体を受け入れるのが難しいものです。ましてや、こころや脳に作用する薬剤を使用するという決断には、とても勇気がいります。自分一人で悩みを抱えて、体調を取り戻すためにさまざまな工夫をしてもがいた末、さらに苦しみを深めて精神科を初診する患者さんのなかには、「とうとう、ここに厄介になることになってしまいました」と、医療サービスを受けることすら、人生の敗北と捉えている方もいらっしゃいます。

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渡邉博幸(わたなべ・ひろゆき)
千葉市にある都市型の精神科専門病院である木村病院で働いています。とくに専門をもたずにいろいろな患者さんを診ていますが、最近は産後メンタル不調の方や若い方に多くかかわっています。薬のこと、こころのこと、暮らしのこと、さまざまな困りごとに、いろいろなスタッフと協力し試行錯誤しながら答えを探す毎日です。著書:『統合失調症治療イラストレイテッド』(星和書店)ほか。