(第3回)「頭がシャキッとするくすりに変えてもらえませんか」

こころのくすり、くすりのこころ(渡邉博幸)| 2020.12.10
「いつまでくすりを飲まないといけないの?」「副作用が心配です」「今のくすりが合わない気がする……」。精神科のくすりを服用する際、当事者や家族は疑問や不安を抱くことがあるでしょう。くすり以外の方法を用いることも大切です。医療者が一方的に治療を提供するのではなく、当事者・家族・支援者が見通しを共有し、よりよい治療につながる工夫を考えます。

(毎月上旬更新予定)

統合失調症の方の生活とくすりの役割

今回は、統合失調症の方に用いられる「抗精神病薬」の話をします。

統合失調症は精神医学の黎明期から、研究・臨床の中心的テーマでした。薬物療法の開発はもちろんのこと、病理・病態の探求、心理療法、リハビリテーション、社会的支援や福祉制度の拡大は、統合失調症を主たる対象として進められてきたと言って過言ではありません。

現在では、従来の悲劇的なイメージは少しずつ減じている印象はありますが、それでも、この病をもつことによって、当事者はもちろんその家族も、さまざまな生活設計の変更を受け入れていかねばなりません。統合失調症は、10代後半から30代という人生の大きな選択に向き合う世代に多く発症します。若い世代が当然の希望として思い描いていた人生や進路の目標を諦め、軌道修正を余儀なくされる場面に出くわすことも多く、また親御さんから他の誰にもぶつけようのない苦悩を投げかけられ、医療者もその苦しみの一部を引き受けざるを得ないと感じることも多々あります。

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渡邉博幸(わたなべ・ひろゆき)
千葉市にある都市型の精神科専門病院である木村病院で働いています。とくに専門をもたずにいろいろな患者さんを診ていますが、最近は産後メンタル不調の方や若い方に多くかかわっています。薬のこと、こころのこと、暮らしのこと、さまざまな困りごとに、いろいろなスタッフと協力し試行錯誤しながら答えを探す毎日です。著書:『統合失調症治療イラストレイテッド』(星和書店)ほか。