(第2回)「眠れないからくすりをください」

こころのくすり、くすりのこころ(渡邉博幸)| 2020.11.10
「いつまでくすりを飲まないといけないの?」「副作用が心配です」「今のくすりが合わない気がする……」。精神科のくすりを服用する際、当事者や家族は疑問や不安を抱くことがあるでしょう。くすり以外の方法を用いることも大切です。医療者が一方的に治療を提供するのではなく、当事者・家族・支援者が見通しを共有し、よりよい治療につながる工夫を考えます。

(毎月上旬更新予定)

睡眠はなぜ必要?

2018年のOECDの調査によれば、日本人の平均睡眠時間は、各国のなかで最短の7時間22分でした。2015年の厚生労働省の調査でも、39.5%の日本人が6時間未満の睡眠時間であったことが示されています。睡眠不足は、注意力や記憶力を低下させ、免疫力や内分泌機能などさまざまな身体機能を乱します。なぜ眠らなくてはならないのかについては多くの学説がありますが、睡眠が生命の維持にとって極めて重要な働きをしていることは言うまでもないでしょう。

睡眠の乱れは、多くのこころの病気にみられる症状です。精神機能をつかさどる多くの神経ネットワークは睡眠に関係しています。睡眠の乱れは、そのネットワークが混乱した結果として生じ、こころの病気の初期症状として「警告サイン」の役割を担っているともいえます。

また、不眠が続くと、情緒の安定を欠いたり、幻視や幻聴が生じやすくなり、現実的な考え方ができなくなります。このようなことから、精神科では、不眠症状をとても重視し、その対応を最優先課題とすることも多いのです。たとえば、救急・急性期入院した患者さんに対して、まずゆっくり寝られるようにすることが治療の第一歩と捉えます。

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渡邉博幸(わたなべ・ひろゆき)
千葉市にある都市型の精神科専門病院である木村病院で働いています。とくに専門をもたずにいろいろな患者さんを診ていますが、最近は産後メンタル不調の方や若い方に多くかかわっています。薬のこと、こころのこと、暮らしのこと、さまざまな困りごとに、いろいろなスタッフと協力し試行錯誤しながら答えを探す毎日です。著書:『統合失調症治療イラストレイテッド』(星和書店)ほか。