(第6回)訴状の作法(2):訴状にどこまでを書くべきか

民事弁護スキルアップ講座(中村真)| 2020.08.03
時代はいまや平成から令和に変わりました。価値観や社会規範の多様化とともに法律家の活躍の場も益々広がりを見せています。その一方で、法律家に求められる役割や業務の外縁が曖昧になってきている気がしてなりません。そんな時代だからこそ、改めて法律家の本来の立ち位置に目を向け、民事弁護活動のスキルアップを図りたい。本コラムは、バランス感覚を研ぎ澄ませながら、民事弁護業務のさまざまなトピックについて肩の力を抜いて書き連ねる新時代の企画です。

(毎月中旬更新予定)

前回から「訴状の作法」と題して、代理人として目指すべき、あるべき訴状について取り上げることとしました。

このテーマの第1回目となる前回は、訴状作成の基礎であり、また最も重要である法令・規則上の規律について取り上げました。

第2回目となる今回は、訴状起案の上で悩みどころとなることが多い「訴状でどこまでを書くべきか」という問題を考えます。

1 「どこまで書くか」の悩みが生まれるわけ

前回見たように、訴状の手続上の役割やそこに書くべき事項については、法令上、ある程度明確に定まっています。

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中村真(なかむら・まこと)
1977年兵庫県生まれ。2000年神戸大学法学部法律学科卒業。2001年司法試験合格(第56期)。2003年10月弁護士登録。以後、交通損害賠償案件、倒産処理案件その他一般民事事件等を中心に取り扱う傍ら、2018年、中小企業診断士登録。現在、大学院生として研究にも勤しむ身である。

著者コメント 裁判所によると、新型コロナウイルス感染症と緊急事態宣言で裁判所の期日が止まっていた4、5月の間も訴訟提起はさほど減少しなかったものの、その中には新しい紛争ではなく比較的古い紛争を内容とするものが多かったらしく、「緊急事態宣言で事件処理の時間に余裕ができた代理人が、滞留していた訴訟提起案件の『在庫』を吐き出したからではないか」と少し話題になっていました。真偽のほどはわかりませんが、おもしろい話です。
次回も、訴状作成に関するトピックを取り上げる予定です。