(4)「安全」と新しい未来のために(野坂祐子)

特別寄稿/いま、子どもの育ちを支えるためにできること| 2020.05.11
特別寄稿:いま、子どもの育ちを支えるためにできること

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、多くの子どもたちが不安を感じながら家庭で過ごしています。臨床心理士として児童福祉領域や学校現場で活動する野坂祐子先生(大阪大学大学院)に、子どもへの関わりでおとながこころがけるべきポイント、「トラウマインフォームドケア」の視点などについて解説いただきました。

「安全」が一番

ウイルスから身を守るために有効な「Stay Home」は、暴力の予防にはなりません。感染症対策は公衆衛生の課題ですが、暴力もまた心身を傷つけ、生涯にわたる健康を損なわせるもので、公衆衛生の問題として捉えられます。

「Stay Home」が危険なときには、「Leave Home」で安全を守る必要があります。「Stay Home」が自分にとって安全なのかどうか、まず「気づく」ことが大切です。

DVや虐待があれば、家庭にいるのは嫌だろう。相談窓口や避難先さえあれば、すぐにでも出ていけるはず。そんなふうに思われがちですが、前述したように「感じない・考えない・話さない」といった対処法でトラウマをしのいできた人にとって、自分がつらいと気づき、なんとかしようと考え、だれかに相談するのは、とてもハードルの高いことです。

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野坂祐子(のさか・さちこ)
大阪大学大学院人間科学研究科准教授。臨床心理士、公認心理師。専門は発達臨床心理学とジェンダー学。主に、児童福祉領域や学校現場において、性被害・性問題行動などへの介入実践・研究を行う。著書に『トラウマインフォームドケア:“問題行動”を捉えなおす援助の視点』(日本評論社、2019年)ほか。