(第2回)民事調停手続を利用してみませんか(1)

民事弁護スキルアップ講座(中村真)| 2020.02.18
時代はいまや平成から令和に変わりました。価値観や社会規範の多様化とともに法律家の活躍の場も益々広がりを見せています。その一方で、法律家に求められる役割や業務の外縁が曖昧になってきている気がしてなりません。そんな時代だからこそ、改めて法律家の本来の立ち位置に目を向け、民事弁護活動のスキルアップを図りたい。本コラムは、バランス感覚を研ぎ澄ませながら、民事弁護業務のさまざまなトピックについて肩の力を抜いて書き連ねる新時代の企画です。

(毎月中旬更新予定)

1 民事調停手続

唐突ですが「民事の紛争を解決するための法的手続」と言われて、あなたが思い浮かべるのはどのような手続でしょうか。おそらくまず最初に思い浮かべるのが訴訟でしょう。

当事者同士での話し合いが難しくなった場合、裁判できっちりと白黒を付けようというのは、法治国家においてはある意味自然な発想です。

他にはどうでしょうか。支払督促や起訴前和解などを思い浮かべる少しマニアックな人もいるかもしれません。また、民事保全や民事執行といった手続中の和解でも民事紛争を解決できる可能性はあります。

では、民事調停についてはどうでしょうか。

これからお話しするように、簡易裁判所の民事調停制度は相応の使いやすさと魅力があり、デキる法律家としては、紛争解決の選択肢の一つとして正しい理解をもち、かつ活用できることが求められます。

ところが、残念ながら現在の法曹界では必ずしもそのような状況になっているとは言いがたく、民事調停官を4年もやっていた私としては、非常に残念で仕方ありません。

なぜかくも民事調停手続の活用がされにくいのか。この点については、いろいろな理由が考えられます。

そこで、今回から3回にわたって、民事調停手続の使い勝手とそれが利用されない理由を探り、そのうえで、法律家として身につけておくべき正しい民事調停の知識について触れてみたいと思います。

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中村真(なかむら・まこと)
1977年兵庫県生まれ。2000年神戸大学法学部法律学科卒業。2001年司法試験合格(第56期)。2003年10月弁護士登録。以後、交通損害賠償案件、倒産処理案件その他一般民事事件等を中心に取り扱う傍ら、2018年、中小企業診断士登録。現在、民事調停官として執務する傍ら、大学院生として研究にも勤しむ身である。

著者コメント 最近は、若い法律家の中には民事調停手続を利用したことがないという人も増えてきているようです。ロースクールでの講義や修習中に調停手続に触れていないというのも原因の一つだと思いますが、調停手続をよく理解せずに「使いにくいイメージ」を持ってしまっている人が多いのではないかと感じます。このコラムで、調停手続を利用したいと思う実務家が増えてくれると嬉しいなと思います。