(第4回)偽薬効果?—比較対照のない実験結果は信じてはいけない

現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2020.02.14
私達が生きる現実社会の多くの問題の理解には,種々の数値の測定や観察とそれを「統計的に処理する」作業が欠かせません.毎日のニュースでもありとあらゆる機会に「数値」が出てきますが,その意味をきちんと考えたり信憑性を疑うことは、必ずしもなされていないようです.この連載では,誰でも知っておいてほしい統計についての基本的な考え方や, 統計にまつわる誤解や陥りやすい罠を紹介していきたいと思います.(全12回の予定)

(毎月中旬更新予定)

まずは、みなさん自身で考えていただくことから始めよう。

Aさんは食品メーカーの研究員で、食後に飲むと血糖値の上昇を抑えるような健康飲料の開発にたずさわっている。共同研究機関での動物実験の結果も良好で、研究は人での効果を調べる段階にまで進んだ。日本人の成人を代表するような実験参加者を50名募り、2ヵ月間毎食後、開発中の健康飲料を飲んでもらった。実験開始時と終了時に血液中のHbA1c1)を測定し値を比べたところ、50人中48人でHbA1cの減少が認められた(図1)。

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脚注   [ + ]

1. 血液中のHbA1cの値は、1-2ヵ月単位の平均的な血糖の状態を示すとされる。

麻生一枝 長浜バイオ大学准教授.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会)など.