(第4回)「カダイ」のノロイ

子育てのノロイを解きほぐす―発達障害の子どもに学ぶ(赤木和重)| 2019.12.10
「〇〇ができないとダメ!」「みんなと一緒でないといけません!」「子育て、かくあるべし!」……そんな子育ての“ノロイ”に、気づけばとらわれていませんか? 発達障害の子どもとかかわる心理学者の優しいまなざしが、私たちにかけられたノロイをやわらかくしていきます。

(毎月上旬更新予定)

家ではすごくないお父さん

寒くなってきましたねぇ。わが家は、夏はシャワーで済ますことが多いのですが、さすがにこれだけ寒くなると、湯船にお湯をはります。仕事をなんとか早く終わらせたときは、息子とゆっくり湯船につかります。それが、なんとも楽しいひとときです。

お湯につかり、からだがほぐれてくると、心もほぐれてくるのか、いつもとは違うやりとりになることがあります。子どもの普段とはちょっと違う顔が見えます。プッとしたり、エッとなったり。

たとえば、息子が6歳のときの冬。お風呂のなかで、なぜかクイズ合戦が始まりました。まずは、私が、「ご機嫌なときは、スキップしながら腕をぐるんぐるん回して、鼻歌をフンフン歌ってる人はだ~れだ?」とクイズを出します。すると息子はちょっと考えて、「ぼく……?」。はい、正解!

でも息子は自覚がないようで、「そうかな……」と確信をもちきれていない様子。いえいえ、そうです、めちゃくちゃあなたです(笑)。嬉しいときは、全身で表現してますから。

次は、息子の番です。息子、少し考えて渾身の問題を出しました。「家ではすごくないけど、大学ではすごい人、だ~~れだ?」。ズコッとなりながら、「お父さん」と答えます。息子は「正解!」と言いつつ、「なんでわかったんかなぁ」と不満そう。いや~、めっちゃわかりやすいです(笑)。大学に何度か連れて行ったときに、私が学生から「先生」と呼ばれたところを聞いていたのでしょう。大学に連れて行ってよかったとマジで思いました。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

赤木和重(あかぎ・かずしげ)
神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授。専門は発達心理学、インクルーシブ教育。同時に、保育・学校現場に入り、子どもや教師の姿に感動し、それを理論化する仕事をしている。著書に『アメリカの教室に入ってみた:貧困地区の公立学校から超インクルーシブ教育まで』(ひとなる書房)、『目からウロコ!驚愕と共感の自閉症スペクトラム入門』(全国障害者問題研究会出版部)など。現在、わが子とのポケモンカードバトルに夢中。