信用なき主催者は、いかにして信頼できる入札を開催するべきか?

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2020.05.07
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Akbarpour, Mohammad and Shengwu Li (2017) “Credible Mechanisms,” Working Paper.

野田俊也

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

概要

古典的な入札(auction)の理論では、入札の主催者は、自分が宣言したルールを厳格に遵守する、装置のような存在であると暗黙裡に仮定されていた。しかし現実には、主催者も参加者らと同様に、参加者らに見破られないような不正を裏で働き、入札から得られる収入を大きくしようとするかもしれない。また、実際には主催者が公正であっても、参加者がそれを信じきっていない場合、入札方式が本来持つインセンティブの構造が歪んでしまう恐れがある。

Akbarpour and Li (2017)は、① 1 位価格入札と、最適な留保価格つきの競り上げ入札の下では、主催者に(参加者に見破られないような)不正を行う動機がない、すなわち、これらの入札方式は信頼可能(credible)であること、②封印入札で信頼可能なものは 1 位価格入札のみであること、③主催者の収入を最大にする入札で信頼可能なものは、最適な留保価格つきの競り上げ入札だけであること、を示した。

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